認知症を取り巻く、ぼくが、えらいなあ、と思った話。
そりゃ、「殺すかも」っていわれりゃ、そりゃ、固まるよ。
どれだけ時間がたったか、わからない。
我に返ったぼくは、すぐに、外勤先の病院を思い出した。
(医者のバイトは、なぜか、外勤という。)
精神科の病院だ。
事情があって、経営母体が変わったばかりのとき。
いままで入院していた人々を地域での生活ができるように手をつくし退院を勧めていた。
なので、入院をお願いするのは、病院としては、前向きではない。
ましてや、体も虚弱。いろいろと病気もあり、内科の管理も必要。
でも、追い詰められたぼくは、その場で院長に電話した。
半ば本気でぼくはいった。
「あのーー、ぼくを首にしていいです。」
「緊急で、しばらく入院で診てくださいませんか」
びくびく、お願いした。
ためらう、か、断るか、と思っていた。
でも院長。
「いいですよ。お幾つの方ですか。状態はどうですか。」
即答。
院長、おとこだなあ。
ともかく、院長に感謝。
入院は翌日に。
娘に伝えた。
「あと一日、耐えてね。」
娘は、安堵のせいか、また、泣いた。
本多さんも、泣いた。
(また、これだ。)
やっと、話が動き出した。もうちょっとで終わるよ。
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