第27回認知症当事者勉強会@三鷹:報告

2024年3月2日(土)三鷹市市民協働センターで勉強会が開かれました。

より良い市民社会に向けて認知症基本法をどう活用するか

話題提供:日本医療政策機構(HGPI)シニアマネージャー栗田 駿一郎氏

教育機関教員や医師、製薬会社社員、介護事業者、薬剤師、ジャーナリスト、メディア関係の方、学生、市議会委員、東京都職員、三鷹市職員、民間企業社員、映画監督、当事者、希望大使、おれんじドア三鷹、介護者の会、地域包括支援センター職員、厚生労働省担当官、認知症の人と家族の会など60名の人々が土曜日の午後、日本の各地から集まりました。冒頭、栗田さんのプロフィールから始まり、今年の1月1日に施行された認知症基本法の成り立ちが紹介されました。また、栗田さんを支えている恩師の言葉が紹介されました。以下に記載。

現実の世界に存 在するさまざまな不正義や抑圧を見逃さないでほしい、受難(passion)に苦し んでいる人の身に自分を重ね、心(passion)を寄せてわがこととして考えてほ しい、不正義や抑圧を強いるものに黙っていないでほしい。

タイトルにある「より良い市民社会に向けて」とは何かという質問から始まり、自治体による計画策定には当事者参画を含めどのように実現していくかのプロセスの大切さを上げ、一般論で終わることなく、地域独自の課題を把握して反映させることが大切だと話されました。また、当事者の多様性(認知症を併せ持つ属性への視座)、様々な声を集約することの重要性も述べられました。

また、認知症基本法が議員立法であることの重み、本人と家族を分けて書かれたことの意味、国民の責務についての考えが示され、これからの施策には明文化して今までになかった価値を落とし込むことが大切などのお話がありました。

後半には栗田さんへの質問形式で

(栗田さんの祖母の認知症が家族関係を壊してしまった)個人的な体験が社会を良くしようという発想にどうやって変わっていったのかという質問のほか、

  • 当時小学生の栗田さんからみた祖母の苦悩は?
  • 様々な意見を擦り合わせるためにその声を聞くことから始まるのではないか。
  • 当事者が意見を述べること(会議で発言する)の困難さ。
  • 会議に参加して議論を闘わせる時、当事者が武器を持って闘う準備の必要性。
  • 当事者と一緒に考えていく必要性があり、私たちが声を上げないといけない。
  • 政治参加・社会参加は大変なことをしなくてはいけない→「より良い市民社会に向けて」としての意味になるのか。
  • 良い当事者参画とはどのようなものか。
  • 大綱からの大きな変化、基本法は医療モデルではない。
  • どのような経緯で変化が起きたのかを考えることでこれからどうしたら良いか見えるのではないか。
  • 大綱からの変化は、日本の政治流れがゴタゴタしている間、JDWGなどから様々な意見が吹き出し、時間がかかったことにも関係がある。
  • 疾患別の法律はいらないと言われた時は、基本法成立は難しいのかと感じた。
  • この話し合いをどうやって現場に持っていったらいいのか。
  • この会の話し合いを考えるネタにしてほしい、何をしたらいいのかを答えられる人はいない。答えるものでもない。
  • それぞれが法律の作られた経緯や内容を持ち帰って考えてほしい。
  • わかりにくいことに対して耐えて聞くことの大切さ。
  • 声なき人の声をどうやってすくうのか、そこから溢れ出てしまうものを見ていくにはどうしたら良いか。
  • 法案には頼らない。日々何ができるのかと考えている。足元でできることをやってきた。
  • 基本法は応援団のようなもの。現状を変えていくことは難しい。
  • どうしたら、人としての暮らしを続けていけるのか。
  • 認知症の世界は閉じ込められている。
  • 悩みや苦しみはなくならない。良い悩み方をするためにこの会があるのでは。
  • 人の暮らしを良くするために社会があるのに、どうして社会がpassion(苦悩)を与えるのか?
  • 当事者参画を本当の意味で実現させる難しさ(お飾りではなく)があり、どうしていったら良いか
  • 当事者性だけに頼ることの危なさ。
  • 「これから認知症になる人」のための意見を法律の中でどう生かすのかが漏れている。
  • この法律は完全無欠のものではない、届いていない声がほとんど、法律の不足を指摘していく必要がある。
  • 認知症だけの話に終わらないようにすることが大事。認知症だけに閉じてしまうと、当事者と家族に分かれていく。
  • これから認知症になる人も当事者だと考えている。自分ごととしてやっている。そこは大事だ。
  • 認知症の人の法律で、疾患に対するものではない。介護からも距離を置いている。
  • 今の状況を語り合うことが大切。自分がいる世界で起きていることの中に認知症の人も私たちもいる。
  • 当事者の声を取り入れる方法をどうしたら良いか、難しい。まず興味を持ってもらうことが難しい。
  • 共生の意味合いが変化してきているのでは。→生物学的な共生ではなく(違った種類の生物がともに暮らしていくのではなく)全ては繋がっているという仏教的な共生になってきていること。
  • 答えを簡単にまとめてしまわないことの大切さ。
  • 災害と認知症の課題。特に孤立してしまう認知症の人たちをどうしたらいいのか。
  • 最後に、「(認知症になった)ばあちゃんはもらうばっかりだったの?」「今の仕事をもらったんではないですか?」という質問には、その瞬間で何かをくれたというのではなく、その人が生きている姿から、ずっと後で影響を与えられていた。全ての人は、誰かしらに影響を与えていると語られました。

数多くの様々な疑問・質問や意見が真剣に熱く語られました。この場所で一つの答えを求めるのではなく、それぞれが持ち帰り、それぞれの立場で考え、自分自身を見つめ、それぞれの道を探るのだと感じました。

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