#7 「わかってもらう」より「うまくいく」声かけを

前頭側頭型認知症(ここではおもに行動障害型をイメージしている)の人に、私はなんと声をかけるだろう。できるだけ状況に即した行動をとってほしいが、一方で、周囲とぶつかってほしくない。
 多くの場合「言葉」より先に衝動性・柔軟性低下・共感性低下が対人関係場面で出てしまい摩擦が起きている。したがって声かけは、説得や議論より、環境調整や短い指示や選択肢などで、成功(環境適応的)体験をしてもらうのが中心となる。

 こうしたことを、できるだけ自信を失わせない声かけで行いたい。

例えば、

課題を極小化して成功率を上げるために、
「まず靴を履こう。そこまでできれば満点だ」
といった声かけ。

自由度を残しつつ迷路化を防ぐ意味で、
「散歩にする? それともコーヒーにする?」
といった二択である。

禁止するだけでなく、代替を用意するという意味で、
「それは後でね。今はここに座って、これを一緒に見よう。」
といった声かけ。

自己効力感を保つために役割を付与するという意味で、
「この袋を持ってくれる? すごく助かるわ。」
といった声かけ。

羞恥心を起こすような叱責を避ける意味で逸脱行動に対して
「今は休憩しよう。落ち着いたら続きをしよう」
「いったん水を飲もう。落ち着いたら次に進もう。」
といった声かけ。

もちろんうまくいかないことが多いが、その人に対しての経験を積むことで、大きく外すことが減ってくる。

繁田 雅弘